島根半島(しまねはんとう)の日本海に面した崖(がけ)の下、海の波でつくられた大きな洞窟(どうくつ)です。洞窟(どうくつ)は、幅(はば)36m、中央の高さ12mで、奥(おく)に進むにしたがってせまくなり、先は入れなくなりますが、洞窟(どうくつ)の穴(あな)は続いています。昔から土器(どき)などが出ることが知られていましたが、発掘調査(はっくつちょうさ)で弥生時代(やよいじだい)から古墳時代(こふんじだい)にほうむられた人骨(じんこつ)が、13人以上発見されています。特に、弥生時代(やよいじだい)の終わり頃の人骨(じんこつ)は、沖縄(おきなわ)の周辺(しゅうへん)でしかとれないゴホウラという貝で作った腕輪(うでわ)をつけており、神をまつるシャーマンのような人物だったかもしれません。海に面した洞窟(どうくつ)に特別な人がほうむられた例で、古代の弔(とむら)いの文化を知る貴重(きちょう)な遺跡(いせき)です。
なお、奈良時代(ならじだい 8世紀)につくられた『出雲国風土記(いずもくにふどき)』には、この遺跡(いせき)のあたりに「黄泉(よみ)の穴(あな)」があることが書かれています。黄泉(よみ)とは、死者の世界のことで、猪目洞窟遺跡(いのめどうくついせき)をこの「黄泉(よみ)の穴(あな)」と考える説もあります。
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猪目洞窟を内部から見た様子
猪目洞窟の入り口
猪目洞窟遺跡出土人骨の腕につけられていた腕輪